2012年06月16日

宮古で「さんてつのうた♪」を買う。

近ごろ、鉄道会社各社からグッズが販売されています。

かつて鉄道会社が作るグッズといえば、記念入場券・乗車券、輪切りにしたレールなど主に鉄道趣味者を対象にした有価証券・部品類がほとんどでした。

しかし近年では、車両や駅名をモチーフにしたキャラクターが作られたり、それに関連する文具類、アクセサリー類、あるいは食品類が作られるなど、幅広い客層にも興味を持つことのできる商品が増えています。

さて現在。全線開通に向けて鋭意復旧工事を進めている三陸鉄道は、震災前からグッズ類の開発販売に積極的です。大手玩具メーカーとのタイアップ、地元企業とのコラボレーションで話題性の高い商品を次々と生み出しています。これらはインターネットを介して全国から通販購入することもでき、運賃収入以外での営業収入の一助になっていると言われています。

そんな「三鉄グッズ」の中において、とりわけ個人的な興味を引いたのが、今回ご紹介する「さんてつのうた♪」(商品番号:UPMM-1003)です。
6月中旬、宮古へ行った際に入手したのはこちら。
upmm1003 さんてつのうた ジャケット


「さんてつのうた♪」は、北リアス線・南リアス線全線の駅名を歌詞に盛り込んだ作品です。
作詞・作曲は岩手県内に活動拠点を持つアコースティック・ユニット「underpath!(アンダーパス!)」が手がけています。

underpath!は岩手にちなんだ作品を数多く作り、幅広い年齢層に支持されています。
画像は2012年デスティネーションキャンペーンの間、盛岡駅新幹線改札口前に掲げられた「みんなでつぶやく いわての魅力!」と題するボード。地元在住の方が自ら語る岩手県のおすすめの中にユニット名とその作品が紹介されるほどの浸透ぶりです。
IMG_1456a.jpg

画像:盛岡駅構内
に掲げられた「みんなでつぶやくいわての魅力」ボード
ちなみに編曲は元「姫神せんせいしょん」のメンバー、佐藤将展さんです。

ジャケットのイラストは、同じく県内で活躍されていて岩手県観光キャラクター「わんこきょうだい(R)」を手がけたグラフィックデザイナー、オガサワラユウダイさんによるものです。相変わらずかわいいキャラクターには「さっちん」、「てっちん」という名前が付いていています。ジャケット裏にはちょっとしたストーリーが書かれているので、ぜひご覧いただければと思います。

同時にクリアファイルと缶バッチのCD発売記念グッズも発売されていて、こちらも併せて揃えたいところ。
さらに入場券を買ってしまうところは、鉄道趣味者の宿命と申しましょうか…。
upmm1003b.jpg

作品を聴くと、駅名を歌う部分で驚きを覚えます。歌詞カードを見て自分も歌ってみましたが、みごとにトチりました。「くじりくちゅううべりくちゅうのだのだたまがわほりないしらいかいがんふだいたのはた…」まるで何かのおまじないを唱えるかのように、メロディーもそれっぽく仕上がっています。これは Three Dog Night の "The Show Must Go On" のイントロ…おっと。

2010年にリリースされた同ミュージシャンの作品「わんこきょうだい〜いぬではございません〜」も早口で歌う部分が話題になりましたが、「さんてつのうた♪」はさらに難易度は高くなっています。こうした歌詞ほど子どもたちは覚えたがるもので、子どもたちの興味を示すツボをしっかり押さえているなと感じます。

ちなみに歌うときのコツは「くじりくちゅううべ りくちゅうのだのだ たまがわほりない しらいかいがん…」と駅名を意識するよりもメロディーを意識することです。

けれどもワンコーラスの締めは、潮風を浴びながらひたむきに走る列車の姿を思い起こす行進曲チックなリズムとメロディーで限りなく前向き。不思議と元気の湧いてくる作品です。三陸鉄道の総延長をもじって「107.6キロのマーチ」ということばが頭に浮かんできます。
「ガタンガタン ゴトンゴトン」という歌詞部分で使われる音色が車輪がレールの継ぎ目部分を通るときに発する金属音の余韻を連想させるなど、インストのみを聴いてもじゅうぶん楽しめます。


<データ>
商品と内容
 ・「さんてつのうた♪」CD(UPMM-1003)
    路線の全駅を歌詞に盛り込んだ歌。
    難易度が高いけれど、挑戦してみたくなる早口の駅名。
 ・「さんてつのうた♪」CD発売記念グッズ
    クリアーファイル&缶バッチ

制作者
 ・作詞作曲:MIKA (underpath!)
 ・編曲:佐藤将展
 ・演奏:underpath! と CEMT
 ・キャラクターデザイン:オガサワラユウダイ
 ・制作:Take4 Promotion

関連サイト
 →三陸鉄道
 └三陸鉄道オンラインショップ
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2012年05月04日

「あした」を失わないこと、それがALIVE。 〜underpath!(アンダーパス!)「ALIVE」を聴く〜

☆はじめに
2009年、旅先で流れていた歌を耳にしてから、私が強い関心を持つミュージシャンがいます。岩手県を活動拠点にしているアコースティックデュオ、「underpath!(アンダーパス!)」です。

以来、岩手方面へ出かけたときには彼らのCDを見つけて聴き続けています。そのことを岩手在住の方に話すと
「まさか関東の人の口からアンダーパス!という名前を聞くとは思わなかったよ」
と言われるのですが、どの作品を聴いても歌詞、メロディーともに私の琴線に触れてきます。

音楽的には
 ・男声女声ともにボイスの音域が広く、ハモりが絶妙。
 ・歌詞に盛り込まれる情報量の多さとそれを歌い上げるリズム感。
 ・どこか懐かしさのあるメロディーとバッキングの音色。
などに魅力を感じ、歌詞からは
 ・生まれ育った土地を愛する気持ち
 ・不撓不屈(ふとうふくつ=どんなことにもくじけない)の意志
そして
 ・一歩前へ進もうとする気持ちを背中から推し進める、力強く温かい歌声とメロディー
を感じ取ることができます。

2012年5月4日、初の全国発売フルアルバム「ALIVE(UPMM-0008)」がリリースされました。CDのリリースは2010年6月以降1年11ヶ月ぶり、第9作目となります。5月16日からはiTunes MusicStoreなどでネット配信も開始されています。

震災の渦中にあった彼らが見た、聞いた、感じたことをもとに作られた11曲の作品には、さきに触れた3つの要素がより強く感じられます。

あの日から1年目の春です。いろんな人が新たな一歩を踏み出しています。
そんな今こそ、この「ALIVE」を聴いてみてはいかがでしょうか。

私も作品に込められた彼らのメッセージを感じて、次の一歩を力強く踏み出していきたいと考えます。


以下は、アルバムを聴いて自ら感じたことを数回にわたって記していきたいと思います。

☆「日常」という「奇跡」
私が強く興味を持ったのはジャケット写真の裏面。
この写真から読み取れるもの、それは「日常」が奇跡の連続で形づくられている、ということではないかと思います。

ずっと変わらず、あすも同じように続くのものだと思われ、そんな日々に気だるささえも覚える日常…。

しかし、ある日突然、何らかの力によって一瞬にして壊れてしまうと、その脆さと儚さを身を以て知らされます。

家があること、屋根があること、畳があること、茶碗に盛られた暖かく白いご飯が食べられること、自分の大切な人と一緒に過ごせること…ひとつひとつが偶然であり、それが集まるのが奇跡です。

広い宇宙の中に地球があり、そこに生物がいることは「奇跡だな」と感じる方は多いと思います。けれども自分の身近なところにも「奇跡」は存在していると意識して感じることができれば、これからの生き方、過ごし方も変わっていけるのではないかと思います。

このジャケットに映しだされたモチーフは、アルバム内の作品といたるところでつながっています。
そのつながりを見つけていくと作品をよりいっそう感じることができるでしょう。
→続きをどうぞ
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2011年08月11日

岩泉の自然と人々に託す復興への願い~せんせいしょん「紺碧の創造」~

radiko.jp」でIBC岩手放送のラジオ番組「ワイドステーション」を聴いていたところ、「それでは音楽です。『せんせいしょん』で龍泉洞イメージ曲『ドラゴンブルー』」とのパーソナリティーの声に私の耳がぴくりと動きました。

昨年末に「Japonesia Vol.1」がネット配信でリリースされて以来の新曲です。放送ではフルコーラスが流れず途中で終わってしまったため、新曲が気になってしかたがありません。
思わずtwitterにつぶやいてしまいました。

stijproject / T-Satou@現代風景通信
ええぇ~っ、フルコーラスで流してくださいよ~ #IBCradio at 08/08 14:00


つぶやいて終わらせるのは何とも惜しく、続いてネットで検索したところ、岩泉町のBlogに詳細が書かれていました。7月30日、龍泉洞の町営50周年を記念したアルバム「紺碧の創造」がリリースされ、龍泉洞ほか町内の施設で販売されるとのこと。

これはじっくり聴いてみたい。遠方在住の人間がこのアルバムを入手できる方法はないだろうかと考えあぐね、放送を聞いてから数分後、問い合わせ先へ電話を入れました。

お電話をした岩泉総合観光さん(龍泉洞温泉ホテル)によると、「送料受取人負担、代金引換(コレクト)でお取り寄せができる」とのこと。さっそく送り先の住所を伝え8日に申し込んだところ、本日10日に受け取ることができました。この場をお借りして、ご多忙のところご送付いただいたことを深くお礼申し上げます。ちなみに商品代金除く送料は1155円(関東地区宛)でした。

それではさっそく開封。観光案内パンフレットも一緒に送ってくださいましたので併せて撮影。

紺碧の創造アルバム
こちらが『紺碧の創造』(PICM-201102)のジャケット。「東日本大震災復興支援プロジェクトCD」の文字が見えます。CD代金1000円のうち100円が岩泉町へ義援金として寄附されます。

収録曲は3曲。1曲目の『ドラゴンブルー』、3曲目の『リスペクツ』ともに佐藤将展さん作曲です。2曲目は岩泉に伝わる郷土芸能『中野七頭舞(なかのななづまい)』を収録した18分37秒の音源です。

『ドラゴンブルー』は龍泉洞のキャッチコピーになっている「想像以上のドラゴンブルー」のとおり地底に広がる湖をイメージした重厚感漂う作品です。大久保正人さん奏でる尺八の音色にこの鍾乳洞を形づくった悠久の年月を感じ、西國亜紀子さんのボイスに青く深い地底湖の空気感が伝わってきます。後半部分の展開は漆黒のトンネルの先に見える光の眩しさが感じられます。

『中野七頭舞』は、江戸時代より小本地区に伝わる神楽の一種で、この音源がCDで収録されたのは初めてではないかと思われます。7つの舞で構成されており、荒野を切り拓き土地を豊かにしていく流れになっています。小気味よいリズムとテンポの「ゆらぎ」が注目されます。

『リスペクツ』は、さきの『中野七頭舞』をせんせいしょん的にアレンジした作品です。シンセサイザーの太いノコギリ波と腹に響くバスドラムで構成される音はクラブで流しても面白いかもしれません。「本家」におけるテンポのゆらぎもこの作品にしっかりと踏襲されています。

せんせいしょん再起動第1作の『桃源郷』、第2弾の『Japonesia Vol.1』と比較し、テーマがはっきりしている分、改めてメロディアスにするよりもテーマをより拡充させるように作品が展開されているように感じました。


――何千年という長い時間をかけて紺碧の地底湖が造られていく自然の力、そして中野七頭舞に込められた荒野から豊作を産み出してきた人々の力、見つめ直すのは復興が叫ばれているいまではないのか――こうしたテーマがアルバムに一貫しているのではないかと私は考えました。

→続きをどうぞ
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