2011年08月11日

岩泉の自然と人々に託す復興への願い~せんせいしょん「紺碧の創造」~

radiko.jp」でIBC岩手放送のラジオ番組「ワイドステーション」を聴いていたところ、「それでは音楽です。『せんせいしょん』で龍泉洞イメージ曲『ドラゴンブルー』」とのパーソナリティーの声に私の耳がぴくりと動きました。

昨年末に「Japonesia Vol.1」がネット配信でリリースされて以来の新曲です。放送ではフルコーラスが流れず途中で終わってしまったため、新曲が気になってしかたがありません。
思わずtwitterにつぶやいてしまいました。

stijproject / T-Satou@現代風景通信
ええぇ~っ、フルコーラスで流してくださいよ~ #IBCradio at 08/08 14:00


つぶやいて終わらせるのは何とも惜しく、続いてネットで検索したところ、岩泉町のBlogに詳細が書かれていました。7月30日、龍泉洞の町営50周年を記念したアルバム「紺碧の創造」がリリースされ、龍泉洞ほか町内の施設で販売されるとのこと。

これはじっくり聴いてみたい。遠方在住の人間がこのアルバムを入手できる方法はないだろうかと考えあぐね、放送を聞いてから数分後、問い合わせ先へ電話を入れました。

お電話をした岩泉総合観光さん(龍泉洞温泉ホテル)によると、「送料受取人負担、代金引換(コレクト)でお取り寄せができる」とのこと。さっそく送り先の住所を伝え8日に申し込んだところ、本日10日に受け取ることができました。この場をお借りして、ご多忙のところご送付いただいたことを深くお礼申し上げます。ちなみに商品代金除く送料は1155円(関東地区宛)でした。

それではさっそく開封。観光案内パンフレットも一緒に送ってくださいましたので併せて撮影。

紺碧の創造アルバム
こちらが『紺碧の創造』(PICM-201102)のジャケット。「東日本大震災復興支援プロジェクトCD」の文字が見えます。CD代金1000円のうち100円が岩泉町へ義援金として寄附されます。

収録曲は3曲。1曲目の『ドラゴンブルー』、3曲目の『リスペクツ』ともに佐藤将展さん作曲です。2曲目は岩泉に伝わる郷土芸能『中野七頭舞(なかのななづまい)』を収録した18分37秒の音源です。

『ドラゴンブルー』は龍泉洞のキャッチコピーになっている「想像以上のドラゴンブルー」のとおり地底に広がる湖をイメージした重厚感漂う作品です。大久保正人さん奏でる尺八の音色にこの鍾乳洞を形づくった悠久の年月を感じ、西國亜紀子さんのボイスに青く深い地底湖の空気感が伝わってきます。後半部分の展開は漆黒のトンネルの先に見える光の眩しさが感じられます。

『中野七頭舞』は、江戸時代より小本地区に伝わる神楽の一種で、この音源がCDで収録されたのは初めてではないかと思われます。7つの舞で構成されており、荒野を切り拓き土地を豊かにしていく流れになっています。小気味よいリズムとテンポの「ゆらぎ」が注目されます。

『リスペクツ』は、さきの『中野七頭舞』をせんせいしょん的にアレンジした作品です。シンセサイザーの太いノコギリ波と腹に響くバスドラムで構成される音はクラブで流しても面白いかもしれません。「本家」におけるテンポのゆらぎもこの作品にしっかりと踏襲されています。

せんせいしょん再起動第1作の『桃源郷』、第2弾の『Japonesia Vol.1』と比較し、テーマがはっきりしている分、改めてメロディアスにするよりもテーマをより拡充させるように作品が展開されているように感じました。


――何千年という長い時間をかけて紺碧の地底湖が造られていく自然の力、そして中野七頭舞に込められた荒野から豊作を産み出してきた人々の力、見つめ直すのは復興が叫ばれているいまではないのか――こうしたテーマがアルバムに一貫しているのではないかと私は考えました。


★関連サイト
いわいずみブログ
7月30日「紺碧の創造」発売!
中野七頭舞ホームページ
龍泉洞温泉ホテル

★余談

余談1. ここは私の憶測なのですが、当初は龍泉洞町営50年記念としてイメージ曲の制作とCDの発売が企画され、レコーディングを済ませこれからリリースする矢先に震災が起きてしまったのではないかと考えられます。もしこの憶測が正しいならば、音源に収録されている大久保正人さん奏でる尺八の音色は貴重なものです。大久保さんの所有していた尺八はあの津波に流されました。

余談2. CDのクレジットを見ると、エグゼクティブ・プロデューサーにIBC岩手放送の姉帯俊之さんの名前を見ることができます。
姉帯さんはせんせいしょんの前身、姫神せんせいしょんを世に送り出した方です。震災直後のIBCラジオがすべての通常番組を中止し、ニュースよりも安否情報、生活情報を優先して伝える編成に切り替えたのもこの方の尽力があったからだとも言われています。
2011年3月26日朝日新聞(朝刊)のオピニオン欄、タウン誌「街もりおか」2010年2月号の記事も併せてお読みいただけると幸いです。

余談3. 猫好きにとって岩泉と言うと「かご猫シロ」が思い出されます。

posted by STIJ Project at 00:00 | TrackBack(0) | 旅で出会った音楽たち | 更新情報をチェックする

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