2011年07月04日

ストーリーを食べる、読む、聴くお菓子~「こおにのてがた」(子鬼の手形)~

今回ご紹介するのは、岩手県内の物産品店などで最近見かけるようになったお菓子、「こおにのてがた(子鬼の手形)」です。このお菓子の面白いところは「一粒で二度おいしい」ならぬ「一箱で3つの楽しみが味わえる」という点です。

こおにのてがた1
こちらが外箱。パッケージイラストを見てピンときた方も多いかと思います。「ダッシュ勝平」や「F-エフ-」などの漫画作品を生み出した六田登さんの作画です。力強い毛筆感あふれる題字も六田さんによるもので、コミック本の表紙をイメージさせるデザインになっています。

こおにのてがた2
箱を開けると2部の印刷物が。一つ目はフルカラー16カットで漫画が収録されています。題材は岩手県の県名や、さんさ踊りの由来となった盛岡の三ツ石神社にまつわる伝説。
二つ目は震災復興への力強いメッセージが伝わる文面。表紙に描かれているだるまは「がんだるま」と言います。

この商品の発売を目前して震災に見舞われてしまったわけですが、その後メディア情報や地元の方の話から聞く県内での復旧活動のエピソードと、同梱の漫画でのストーリーが重なる感があり、胸が熱くなります。

こおにのてがた
こちらがお菓子。名称どおり、かわいい手形がついています。「桃山」という和菓子に似たほっくりした食感を楽しむことができます。2種類の風味が味わえるようになっていて、個人的には胡麻の食感が気に入りました。地場産の穀物を原材料に使っている点も着目です。製造元は「北の菓子 菓風」のオムレットが話題になった一ノ関の田代製菓さんです。

こおにのてがた3
箱の裏面も欠かさずチェック。発売元、喫茶イーハトーブさんのURLに並んで「└こちらより「こおにのてがた」の歌がダンロードできます」の案内。「ダウンロードだろ?」という突っ込みはせずに、Webサイトをごらんくださいませ。

サイト内のMP3をダウンロードして再生してみると、この音楽がとても印象に残り、しばらく頭の中で歌とリズムがエンドレスリピートされます。

この歌を作詞・作曲したのは、このサイトで何度か話題にのぼる「せんせいしょん」の佐藤将展さん。将展さんは現在、放送番組、CM関係の音楽制作に携わっていますが、過去に童謡レコードの編曲に関わっていた時期がありました。

実はこの童謡の編曲活動がのちの作品に大きく反映されているのではないかと思います。「こおにのてがた」の歌も例外ではなく、覚えやすいメロディと歌詞、聴いていて楽しくなるアレンジに将展さんの音楽的引き出しの広さをまた知ることになりました。


YouTubeの岩手日報社チャンネルで紹介している動画。1万回以上の再生回数を記録している動画です。

コンセプトがしっかりしている商品です。お菓子の材料や型取りから、パッケージ、イメージソングまで「三ツ石伝説」のストーリーが一貫しており、商品を買った人はこのストーリーを食べて、読んで、聴いてと五感で楽しみ、理解することができるわけです。

「こおにのてがた」が問いかけているもの。それは、なぜいま「三ツ石伝説」なのか? ということではないかと思います。――厳しい自然と共生するために、人々がお互いに助けあって生きるためになにをすべきか――このストーリーには、復興プランをつくり、活動を進めていくうえで忘れてはならない基本理念が含まれているからではないでしょうか。
posted by STIJ Project at 23:08 | TrackBack(0) | My Trip 岩手篇 | 更新情報をチェックする