企業や商品の広報目的で作られたこれらの楽曲は、会社名や商品名を歌詞に含めたもの、企業名や商品名には直接言及していないけれども、それらのイメージを思い起こす歌詞が含まれるもの、歌なしのインストで企業や商品をイメージをさせるものなど多岐にわたります。
また、企業のイメージアップや商品の販売促進を目的とすることから、楽曲の制作には相当な配慮が必要になります。歌詞・メロディを含め短時間でインパクトのあるフレーズを作るところに音楽家のスキルやセンスが求められます。さらに奇をてらった前衛的作品よりも、幅広い層に受け入れられる最大公約数的な作品でなければならないという、作り手にとってはとても制限事項の多い分野といえます。
その分、あらゆる音楽ジャンルや作曲・編曲手法が1曲の中に凝縮されているので、これらの楽曲を聴き続けるとたまに「お宝」に出会うことがあります。そんな「お宝」を探すのも旅の楽しみです。
さて本題。盛岡に立ち寄り宿泊したホテルのレストランで朝食を摂りながら地域情報に強い「岩手日報」を読んでいたところ、「駅前商店街を歌で元気に 盛岡で女性2人組がCD発表(2011.06.16)」という見出しを発見しました。これは私の興味が強くそそられる記事です。さっそく開運橋を渡り、駅前にやってまいりました。
抜けるような青空。開運橋から望む岩手山がとても美しい。観光写真でよく出てくる定番アングルです。
こちらが今回入手したCD、「GO! GO! 開運かなえちゃん」。リリースされた100枚のうちの1枚で価格は1000円也。2曲目は「開運かなえちゃん音頭」でそれぞれカラオケ付きです。「音頭」が入るのはこの分野の「お約束」です。
ジャケット、CDレーベルともにインクジェットプリンターで印刷したであろう手作り感あふれる構成です。「商店街アイドル」こと「スマイル娘」の中央に立つキャラクターが「開運かなえちゃん」。なかなかのユルさを醸し出していますね。2010年に誕生したキャラクターで、全国の公募から松戸市在住の61歳主婦の作品が選ばれたそうです。着ぐるみにしても無理のないデザインです。なお、ジャケットの背景に映る開運橋は、駅前商店街から南東方向に見たアングル。
2曲とも作詞・作曲は地元のシンガーソングライター、七瀬龍一さん。IBC岩手放送ラジオ、FM岩手にレギュラー番組を持ち、県内イベントのイメージソングなどを次々に送り出しています。今秋までradikoで各放送局の番組を聴くことができます。優しそうな声をしている方です。
ボーカルは「スマイル娘」のおふたりでそれぞれ「アーちゃん」と「ミーちゃん」の愛称がついています。笑顔でお客さまをお迎えしようと盛岡駅前商店街振興組合では接客力アップに向けた活動を続けていますが、「スマイル娘」の選定やイメージソングのリリースもその一環です。
それでは実際に聴いてみましょう。
いい感じのユルさが出たポップです。商店街のイメージというよりはむしろ「開運かなえちゃん」のイメージを前面に出したキャラクターソングに仕上がっている印象です。過剰に奇をてらわない正統派です。「史上最強のリトルフェアリー」というくだりが個人的にツボです。あれだけの重いアーチを頭に載せていたら、たしかに史上最強かもしれませんね。この音楽をバックに「開運かなえちゃん」が盛岡駅から商店街を一巡し、開運橋に向かって空を飛ぶようなアニメーション映像をつけると結構いけるのではないでしょうか。
歌詞カードを見開くと、2曲目の「開運かなえちゃん音頭」の振付けが細かく書かれています。「踊り:ガッツポーズをして軽く膝を曲げる」はみんなで踊ったら結構インパクトがあると察します。
こちらがYouTubeにアップされた「開運かなえちゃん音頭」の振り付け。
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