2014年07月06日

2014.07 至近距離で「凄ワザ」を見る3時間 〜巣鴨とげぬき地蔵尊・鳴子こけし実演展示〜

鳴子こけし実演展示1


先日、休養で鳴子温泉に滞在していた折、このイベントが開催されることを知りました。
「めったに見られないものが見られるからぜひ行ってみて」
ということばに惹かれて向かったのは東京巣鴨のとげぬき地蔵尊。

震災復興支援イベントとして2012年から東京巣鴨のとげぬき地蔵尊(高岩寺)で開催されている「伝統こけし製作実演」。第1・2回の2012年は福島の土湯系、翌年第3・4回は青森の津軽系、そして第5回目の今回は鳴子系です。地元の伝統こけし工人さんをお呼びして製作風景を実演していただくほか、作品の展示や販売も行なう内容です。
「なぜ、とげぬき地蔵尊でこけしなのか?」という疑問には「住職さんが東北地方のこけしを収集されているから」が答えだそうです。

鳴子こけし実演展示2
会場は高岩寺の隣にある信徒会館ですが、境内では観光PRコーナーが置かれ、地元の名産品が展示販売されていました。観光案内所や商工会の見覚えある方々もPRのために東京入りしていました。

私の行きつけ「玉子屋本店」の「こけしのゆめ」と新製品「もなかフランセ」が並んでいるのを発見。ここだけの話、「もなかフランセ」の商品写真は私が数カ月前に撮影したもの。ご採用ありがとうございます。

鳴子こけし実演展示3
「肉のしばさき」オリジナル調味料、「しばドレ」、「しばだれ」のポスターは、さきの「こけしのゆめ」のパッケージをデザインした宮本悠合さんの作品です。

鳴子こけし実演展示4
それでは会場へ向かいます。
今回の実演者さんたちの作品が展示され、購入することもできます。

鳴子こけし実演展示5
また、土湯系、南部系、津軽系など伝統こけしの各系統別作品も展示されています。
特に津軽系の表情や形状、模様をじっと眺めていると、一本のこけしには縄文期以降数千年の長い歴史が刻まれているんだなと感じます。

鳴子こけし実演展示6
展示コーナーでじっとこけしを見ていると、このイベントを主催した「東京こけし友の会」の会員さんからお声をかけられ、貴重なお話をうかがうことができました。

伝統こけしには地域や工人さんごとにフォーマットや意匠が決まっていて、それらは親から子へ、師匠から弟子へ直々に伝えられながら現在に続いています。よって他の工人さんのフォーマットや意匠を使うことをしないのが暗黙のルールとのこと。すべて手造りのため同じものはふたつとなく、一本一本のバリエーションを楽しむのがこけし趣味の面白いところです。

そういえば鳴子の喫茶店に行ったとき「こけしの違いってどうしたら分かるんでしょうね…」とお店のご主人に訊いたところ、「じっと眺めていると次第に分かるもんだよ」と教えてくれたことを思い出しました。

「こけしの観点」は人それぞれですが、主なものを取り上げると…
 ・顔の表情(面描)
 ・胴体の描彩
 ・全体的な姿(フォルム)
 ・製作者とその年代
 ・産地による系統、師弟関係による系統

などといったものがあって、それぞれの観点でいろいろ調べていくとなかなか奥が深いのですが、直感的に「これ、かわいいな」と感じたものをまずは買ってみて、ゆっくり眺めるのがいいのかなと思います。「また欲しいな〜」と思ったらこけしの魅力に少しずつ出会えるのではないかと感じました。

鳴子こけし実演展示7
冒頭で書いた「めったに見られないものが…」はこちら。「足踏みろくろ」による製作実演です。
足踏みろくろは旋盤の先祖的なもので、江戸末期に登場し全国の木工製作現場で使われました。東北地方には明治期に伝わり、鳴子では昭和20年代頃まで使われていました。その後、モーターが動力源の「電動ろくろ」が昭和初期から普及し、現在ではこけし製作の場面で足踏みろくろを使うことも、さらにはそれを動かせる人も少なくなりました。

この足踏みろくろを使える数少ない技術者のひとりがこちら、伝統工芸士・早坂利成工人です。

鳴子こけし実演展示8
鳴子のこけし店では製作現場を人通りのある窓側に置いて、観光客が見学できるようにしているところもありますが、目の前数十センチの至近距離で見られる機会は貴重です。

鳴子こけし実演展示9
真剣な眼差しの早坂工人。けれども来場された方が質問するととても気さくに楽しく説明してくださいました。
木を削るには一定の回転数が必要ですが、速過ぎると木地が吹っ飛んでしまいます。足の踏み加減で回転数を調整しながら、なおかつ手に持ったかんなを木地に当てていく…長年の経験と技術があって初めてできるものなのだと感じました。

鳴子こけし実演展示10
独特な形状のかんなで削るときの音が心地よく感じます。
こけし工人さんは道具も自分で作ります。
「ホーマックには売ってないから(笑)〜早坂工人談〜」

こけしの製作は木を削るところから絵付けまですべて一人の工人さんがこなします。
分業にできないのは「全体的なバランスを見る必要があるから」。
大きさも定規で測ることはせず、自分の眼と手で読み取ります。
「寸分違わず同じものを量産する」ではない価値観がここにはあります。

鳴子こけし実演展示11
木地の表面を磨くのは「とくさ」を束ねたものを用います。
漢字で「砥草」と表記するように茎の表面にあるギザギザを使ってサンドペーパーの要領で磨くと、柔らかなツヤが出てきます。現在の制作現場でも市販のサンドペーパーと併せて使っています。
ちなみに、とくさに水をつけることで目の粗さより細かいものにすることができます。さらに細かい目が必要なときは「稲わら」を使います。

最近はこけしの表面に蜜蝋を塗ることで、より光沢を出したり絵付けの染料が流れないようにしています。
けれども水気は苦手で、今回のように雨が降っている日が展示品や販売品を雨で濡れた手で触られないように気を遣うのだとか。

鳴子こけし実演展示12
気づけば3時間近く会場でこけし作りを見ていました。鳴子には何度も出かけているけれども製作風景をじっと見る機会は今までなかったのが正直なところです。「東京こけし友の会」の会員さんからお伺いしたお話もとても興味深く、こけしの見方がまた増えました。
おそらく次に鳴子へ出かけるときには、こけし店の中でずっと作品を見入ってしまう自分がいるのではないかと想像に難くありません。

〜後日談〜
やはり見れば見るほど興味は湧くもので、私も「東京こけし友の会」に入会させていただきました。

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2014年06月29日

盛岡バスセンターの風景(増補版)

盛岡バスセンター

全国の盛岡バスセンターファンのみなさま、こんにちは。

2010.06.15-18 北上・花巻・遠野・盛岡へ(Twitterまとめ)
で盛岡バスセンターを取り上げ、さらに画像を追加アップしてこの記事を書いたのは2010年。それ以来、すっかりファンになってしまったようで盛岡に出かけるたびにバスセンターを訪れています。
さらに2014年6月に未収録画像を含めて増補改訂を行ない、ファンのみなさまがよりお楽しみいただけるよう記事を編集いたしました。


(過去に撮影した動画を再生リストにまとめました。なお、銭掛行は2012年3月をもって廃止されました)

盛岡バスセンター外観
バスセンターは中の橋を渡り中三デパート(現・ななっく)の斜向かいにあります。
自動車ターミナル法に基づいて設置された日本初の一般バスターミナルで、開設は1960年(昭和35年)4月。
特急「はつかり」号がキハ80系列ディーゼルカーで運転されるのはその半年後の話です。

盛岡バスセンター5
中ノ橋通、バスセンター交差点よりバスセンター建物をのぞむ。開設当初は2階建てでしたが、その後3階部分が増築されました。

盛岡バスセンター入口
中の橋通りに面した入口。このドアをくぐると1960年代にタイムスリップします。

盛岡バスセンター
施設名称のロゴは洗練されています。建物を含めて一貫したデザイン性を持っていたはずなのですが、後日取り付けられた広告看板もその部分を理解してくれたら…と思います。

盛岡バスセンター屋内
すり減ったリノリウム張りの床、ビニール表地のイスに懐かしさが感じられます。
画面右側の階段を見ていたら、大宮駅東口(埼玉県)の「大一ビル」を思い出してしまいました。

盛岡バスセンター
売店「フジワラショップ」。
品揃えの多さにこのバスセンターから出発するバス路線の距離具合が分かります。

フジワラショップ
ショーケースもさることながら時代を感じさせるのは、商品の陳列方法にあるのではないかと思います。ショーケースの中に「パイの実」や「マリービスケット」の箱を並列にすると、高級感が出てきます。こうした陳列、30年前の映画館の売店で見かけた覚えがあります。

「フジワラショップ」は盛岡市内にある「藤原養蜂場」が経営母体になっており、同養蜂場の製品も陳列されています。「スズメ蜂ウォーター」という瓶入りドリンクは1本600円と高価ですが、一気に飲み干すと旅の疲れが不思議と和らぎます。

キャプションに「昭和56年頃撮影」と書いても十分通用するのは、売店に掲げられた看板。「明治スカット」は1960年代に初頭に発売された明治製菓の清涼飲料水のブランド名。「味乃家」さんは弁当類を販売しており、盛岡の隠れ名物「しょうゆだんご」も買うことができます。

喫茶コーナー
味乃家さん隣の喫茶コーナー。
赤いアクリル板と窓にかかるレースのカーテンがいい雰囲気を出しています。

フジワラショップ
雑誌やテレビなどでこの売店風景が紹介されることがあり、「明治スカット」や「でん六ミックス」の電照看板にいつも目が行ってしまうのですが、実は売店側の天井近くにも看板があって…

フジワラショップ
見づらいですが、SONY(ソニー坊や付き)。

フジワラショップ
旺文社が1960年3月に発刊した日本で2番目のテレビ雑誌「週刊テレビ時代」。
デラックスということばは60年代〜70年代にとても流行りました。

フジワラショップ
「週刊現代」、「女性自身」

…と看板が続いているのを先日見つけてしまいました。
おそらくバスセンター開設当初から設置されているものと推測されます。

盛岡バスセンター1

フジワラショップ
フジワラショップ売店の向い。軽食堂はそば屋さんとラーメン屋さん、喫茶コーナーの横にはたこ焼き屋さんがあります。中長距離バスに乗る前の腹ごしらえといった感じでしょうか。そば屋さんの隣、待合室を挟んだ場所には時計屋さん(吉田時計店)があります。

館内にいると聞こえてくる「お待たせしましたぁ〜 ○番線にぃ〜 〜行きがぁ〜 発車いたします〜」と独特なイントネーションで放送する肉声の館内アナウンスもナイス(ページ内動画参照)。

ちなみに「フルタのチョコレート」のフルタ製菓は大阪が本社でセコイヤチョコレートやチョコエッグなどが主力商品で現在も販売中。一方、「フルヤのキャラメル」の古谷製菓は残念ながら1984年に倒産しています。

盛岡バスセンター2
アイスキャンデーや珍味まで置いてある盛岡バスセンター。現在が21世紀であることを忘れさせてくれます。

盛岡バスセンター6
待合室。バスの発車するプラットホームとはアルミサッシで仕切られており、寒い冬場でも暖をとりながらバスを待つことができます。

待合室

待合室
夏になると「すだれ」が窓側に取り付けられます。
館内には冷房はなく、窓を全開にしたり天井の扇風機を回すことで外気を取り入れています。

待合室

待合室
2012年頃、藤原養蜂場製品だけを集めた販売コーナーは売店側に集約され、待合室に改造されました。

盛岡バスセンター7
発着場は頭端式ホーム(上野駅地平ホームのような形状のプラットホーム)。

プラットホーム風景
方面表示板と発車指示灯。バスは駐留所から急旋回してプラットホームに突っ込み入線します。発車の際はバックして構内を出ます。構内の安全確保と通行円滑化のため、センター建物内にある指令室からの発車指示がないとバスは発車できないようになっています。

プラットホーム風景
発車時間になると、バスは戸閉操作ののち、発車指示灯の点灯を確認し、ハザードランプを点灯しながら誘導に従いバック運転を行ないます。
なおWikipediaによると、毎正時(00分)にはラジオの時報を構内に流し、時報に合わせて発車指示ランプを点灯させているとのことです。

盛岡バスセンター8
発車指示について書かれたボード。

プラットホーム風景
重量のあるバスが繰り返し踏んでいった跡。
アスファルトを盛り直している箇所もあります。

プラットホーム風景
プラットホーム7番線〜8番線そばにある地下通路入口。
おそらく出札口のある事務室へアクセスできるようになっているのではと推測されます。

以前は中ノ橋通に公共地下道が設置され、バスセンター転回場付近とウィズビル(ななっく左隣、現在は解体)付近に階段がありましたが、地上部分の横断歩道設置に伴い2013年頃に閉鎖されました。画像の通路と公共地下道が接続されていたかは今になっては実地調査ができず謎のまま。

盛岡バスセンター11
転回場から見たバスセンター建物。バスの運行本数に較べて構内の操車容量が限られているのが現状で、構内に入線するバスは中距離線や長距離線が中心です。市内循環線や宮古方面の106急行、郊外線は中ノ橋通沿いなどに設置された停留所(神明町・ななっく前)から発車しています。

転回場
夏の風景。

転回場
秋の風景。

盛岡バスセンター9
屋内の出札口。有人窓口が2箇所と自動券売機が2箇所あります。路線バスは整理券方式の運賃後払いですが、構内アナウンスでは「乗車券をお買い求めの上、ご乗車ください」と案内が流れます。

盛岡バスセンター10
路線図。北は八戸、南は湯田温泉方面まで掲出されています。

盛岡バスセンター3
夜のバスセンター屋内。運賃表に載っている方面を見るとバス路線網が県内のほとんどの地域をカバーしていることがわかります。廃止された区間もあり、ところどころ紙片で覆い隠されている箇所があります。

盛岡バスセンター4
売店や軽食堂が閉まり、静まりかえる待合室。夜行列車が深夜に発着する大きな駅の待合室に似た空気が漂います。

盛岡バスセンター5
バスセンターで見る「東京駅行」の文字は、新幹線のりばで見るそれよりも、はるかに遠く離れた場所という印象。

余談ですが、このバスセンターを題材にして歌を作ったら案外ヒットするかもしれませんね。


〜参考映像〜

IBC岩手放送の公式YouTubeチャンネル「6BOX」で公開された、オープン直後のバスセンターの模様です。
当初の建物が2階建ててあったことがこの記録映像からも分かります。
同社は過去のニュース映像や放送番組を数多く保存していると言われています。


2016年4月、さらに同社の保存映像が公開されました。
オープン当初の館内の様子を記録したとても貴重な映像です。
1階部分には売店等はなく、広々とした待合室がフロアに広がっていました。
出札口のほか改札口が設置されていたことも映像から分かります。
館内の広告看板には「メグロオートバイ」の文字も伺えます。
2階には食堂、喫茶室、理髪店がありました。
ちなみに2階にあった食堂は盛岡八幡宮前のわんこそば店「初駒」が創業当時に営業していたところです。

改訂履歴
2010.06.22 記事投稿
2011.07 補遺
2014.06.29 未公開画像を含めて再編集
posted by STIJ Project at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | My Trip 岩手篇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする